かわいいフクロウ型ロボットは“凄腕マーケター” デジタルサイネージはマーケティングする時代に

街角の広告や店内での広告は一昔前までは、静止画のポスターや店頭に置かれるポップなどが主流だった。それが薄型のモニターが誕生したことにより、動画を使った広告が流れるようになったのはここ数年のこと。しかし、静止画や動画になったとしても、その広告たちは顧客に対して発信するのみで、顧客から情報を得るということはできなかった。

現在、デジタルサイネージはまた更なる変革期を迎えている。IoT、AIが発達したことにより顧客1人1人に合わせた情報発信や、その顧客からの情報を取得するということもできるようになった。それによりデジタルサイネージは広告という枠を超えて、マーケティングツールのひとつになった。

そんな新時代、わずか身長10cmのマーケティング支援AIロボット「ZUKKU(ズック)」を開発し、デジタルサイネージとマーケティングを掛け合わせ、業界の流れを牽引する株式会社ハタプロ。そのハタプロは街中に新たな発見、体験を提供するため、飲料メーカーとタッグを組み、自動販売機にZUKKUを搭載して実証実験なども行っている。この小さなロボットから見えるデジタルサイネージ、マーケティングにおける価値創造の可能性に迫る。

手のひらにのるマーケティング支援AIロボット「ZUKKU(ズック)」【同社提供画像】

自社ブランドとしてのロボット開発

2010年に設立した株式会社ハタプロは、AIやIoTといった最新の電子機器を製造するモノづくりベンチャー企業だ。クラウドAIとハードウェアの技術を組み合わせ、仕様策定、プロトタイピング、最終製品の生産までを一貫して行っている。

ハタプロは、2014年に台湾政府系の財団法人工業技術研究院(ITRI)と業務提携をしている。そこからハードウェア関連のビジネスが加速する。そして、ソフトウェアとハードウェアの両方の開発を大手通信機器事業などからのOEMで手がけていくが、OEM製造で培った技術を活用し、自社で独自ブランドを展開していこうと決意する。

2017年に第二創業期を迎え、ハタプロ・ロボティクス株式会社を設立。自社ブランドとしてのロボット製品をリリースした。ハタプロ・ロボティクスが開発した小型のフクロウ型ロボット「ZUKKU」は、マーケティング支援を行うAIロボットだ。SIMカード内蔵で、スイッチ1つで稼働。通信に繋がって、プライバシーを侵害しないセキュアな形式でデータを取得・解析を行い、自律思考して人を手助けするさまざまな提案や行動を促進する。

ZUKKUとセットとなるこのディスプレイもハタプロ社製だ

人手不足の業界に求められるZUKKU

このZUKKUは小売、飲食、サービス業など、人手不足が顕著な業界からの要望が多いという。業務効率化にロボットを活用したいが、既存のサービスロボットは、無駄な機能が多く値段が高かったり、大きくて設置場所が制限されたり、という問題があった。商売に必要な機能だけに特化した、現場で本当に使えるロボットが欲しい、そういったニーズのほかにも、店舗に商品を卸すメーカー業からは、顧客と一番接点が近いリアルな現場で、常に顧客の生の声を聞けるマーケティングツールやインタラクティブな店頭媒体が欲しい、というような要望が寄せられた。

同社代表取締役の伊澤諒太氏は、「これはニーズがあるのに本当に使えるロボットが少ないという実情があるからなんです。自動車業界で例えると、荷物を運ぶにはトラック、たくさん人を運ぶならバス、といった用途に合わせた自動車が用意され、最適化が図られています。しかしロボット業界では今、“ファミリー用のセダンしか自動車がない”、そういう状態なんです」と話す。

ハタプロでは、こういった要望に応えるべく、ビジネスに特化したロボット開発に注力している。特にマーケティングにフォーカスしたロボットだ。

「このロボットには、必要な機能だけを搭載しようと考えました。さらに必要な機能があれば追加できる、カスタマイズもできるものでなければ現場のニーズには応えきれません。そして、顧客との接点はインタラクティブなものでなければならない。この部分を最重要事項として掲げ、開発を行いました」

インタラクティブなもの、それはどういったものなのだろうか。

「インタラクティブなものを実現するため、チャットボットをリアルにロボットできるようなものを想定しました。eコマースでは、チャットボットが顧客と会話するというのは、当たり前になりつつあります。これがリアルの世界ではないということに疑問を感じました。チャットボットであれば、顧客との会話をログとして残すことができます。リアルの現場であっても、ロボットが情報収集した内容をログとして残すことができるのでは、と考えたんです」

ZUKKUは現在、法人向けのロボティクスソリューションとして、さまざまな業界の企業と協業し、進化を続けている。

「2017年8月には小売業向けに次世代の販売促進パートナーとしての機能を強化しました。ZUKKUが取得した識別データを、クラウド型マーケティング管理システムに蓄積して可視化し、売り場の需要予測や販促施策立案、付随するデジタルサイネージ広告配信の自動最適化など、AIとロボティクスを活かした付加価値を提供していきます」

ハタプロ代表取締役の伊澤諒太氏

自動販売機にマーケティングAIロボットを

「ZUKKUを配置することで、街の人々の動きをデータ化し、可視化することができます。街全部をビッグデータ化できるということです。この蓄積したデータを活用して、新たなビジネスも形成できると考えています。流通や小売、不動産などあらゆる業界にさまざまなサービスを提供してけるようになります」

ZUKKUは人が通れば呼びかけ、その人が気付き、正面を向いて近づいてくれば、その動きを検知し話し始める。

「今回、飲料メーカーと協力し、自動販売機の中にZUKKUを搭載したマーケティングの実証実験を行いました。自動販売機に設置するため、それに合うようアタッチメントも飲料メーカーと共同で開発しました」

この自動販売機用に通信、ソフトウェアなどを刷新する必要があったが、それら準備期間は3ヵ月程度だったという。「ハタプロは新しい製品をつくる、そういうモノづくりは得意ですから」と伊澤氏は話す。

このZUKKUを搭載した自動販売機は、ペットのような愛らしい姿と動きで人を呼び込み、時間・場所・性別・年代などに合わせて、雑談や会話のきっかけとなるコンテンツを提供し、その場にいる人達のリアルコミュニケーションを促進させる。また、顧客に合わせた商品なども提案することで、購買行動にどのような影響を与えるか検証した。

「ZUKKUから得られる情報は、顧客のデータ化、可視化であって、そのままマーケティングに活用することができるような情報が取得できるのです。自動販売機におけるコミュニケーションロボットの効果や活用方法を見極め、今後も次世代の購買・飲用体験の向上、新たな価値創造の可能性を検証していきます。自動販売機はたくさんあるので、日本全国でもっとZUKKUを設置していきたいと考えています」

ZUKKUが取得したデータの一例【同社提供資料】

観光業界ではロボット観光案内役に

ホテルや観光案内所などへの設置も進めている。外国人の方向けに各言語30ヵ国語ほどに対応している。ZUKKUがあれば、観光案内を24時間365日稼働できるのだ。

「台湾の有名な観光地である澎湖諸島で、ITRIや現地当局と協力し、観光におけるスマートシティプロジェクトを行っています。店舗やホテルなどにZUKKUを置いて、男性や女性、家族連れといった旅行者を識別し、それぞれに合った観光情報などを提供しています。今までのデジタルサイネージは一方通行だけでしたが、ZUKKUならどういう顧客なのかを判別し、その顧客に合わせた広告やコンテンツを届けられます。また、サービスロボットとしては現在、最軽量であり、最小であると確信しています。この小ささを活かして、モビリティなどへの設置もできます」

ソフトウェア、ハードウェアすべて一貫で行う開発体制

ハタプロは今まで、OEMで数多くのAIやIoT製品開発を手掛けている。その開発技術を活かして、ZUKKUの機能を応用した音波、接触、加速度、カメラ、マイク、スピーカーなどを搭載し、必要に応じてカスタマイズしたOEM提供も行っている。

「当社の製造体制は、ソフトウェアとハードウェアの設計を一貫で実施し、特殊な要素技術や部材(ディスプレイ、バッテリー)などは、提携研究機関から最新部材を優先的に入手して開発しています。特に最終製品の生産については、自社で一貫して行えるため、製品のライフサイクルが早い現代において望まれる小ロットにも対応できることが強みになっています」

自社で一貫して製造することで、高い汎用性を実現している。開発スピードにも自信も持っている。

2017年12月に台湾政府系企業で、Wi-Fiプラットフォームアプリを提供する「Y5Bus」と契約を締結している

「現在、ZUKKUは自ら可動はできないのですが、今後は動けるようにして、人を検知したら近づいていくZUKKUというのも開発したいですね。そうすれば今までのディスプレイを使った広告などとはさらに差別化ができるのではないかと思っています」

この新しい対話式のデジタルサイネージはサイネージメディアに革新を起こした。そして、このZUKKUの活用方法は無限の可能性を秘めている。

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